【咲矢弓道具 職人様訪問コーナー】
咲矢弓道具では、弓道愛好家の皆様と、弓道具製作者様、弓道具店様をより良く、
お繋ぎすることを目標に活動しています。
当コーナーでは、職人様にスポットを当て、弓道具と、その人を紹介させて
いただきます。
第3回は、楠見蔵吉弓製作所の楠見蔵吉先生に取材をさせていただきました。
弓師 楠見蔵吉先生は、薩摩日置流の流れを受け継ぎ、堀江善兵衛先生より続く、
弓作製の系譜7代目にあたります。堀江善兵衛先生は特に“ニベ”の研究に励まれ、
現在も楠見家に伝わる独特のニベを完成されました。
ニベ弓は、ニベの特性上、作製時期・タイミング・体調等が整わないと、作製
できないことが難点ではありますが。ニベ弓は寒くなるほどに、冴えが出て、
引き味柔らかく、矢は速く、反動・振動は少ない、と語られる、一度は使用
していただきたい弓であります。
Q. 目指している弓はありますか?
A. 一番は、射手の邪魔にならない弓ですね。引いた射がそのまま矢に現れる弓、
失敗したら、ちゃんと教えてくれる弓、そういう弓がいいですね。
Q. 弓作りで難しいところを教えて下さい。
A. 入木を付けるのが一番難しいですね。弦通りの入木では無く、弓自身が内に
秘める入木です。
Q. 弓作りで楽しいと思う時を教えて下さい。
A. 弦を張る瞬間は、楽しく、緊張もしますね。竹切りも好きですが、体には
きついですね。
[朝、山に着き、目当ての所まで登り、竹を選び、切り、道まで降ろし、掃除を
して帰る。年に何回か藪払い(やぶはらい)をし、台風等の自然の脅威をくぐり
抜けるお手伝いを
する。まさに、好きであることと共に、弓道文化の維持・継承の思いがなければ、
出来ないことだと思います。(筆者感想)]
Q. 夏・冬で強さは変化しますか?
A. そうですね、夏用・冬用の弓を用意してもらうのが良いと思います。
Q. 射数はどうですか?
A. 夏場は20射くらいまでが良いと思います。カーボン弓なら40射くらいまで
大丈夫だと思います。冬場は気にしないで大丈夫だと思います。
Q. 竹弓のお取扱い時の注意点はありますか?
A. 行射の際、角見を効かせようとして、捻るのは止めて欲しいです。私の弓は、
自然に角見が効くように苦労して入木を付けているのです。実はグラスファイバー
弓にも入木を付けています。これが、とても難しいんです。良く出来たと思います。
楽しみにして下さい!と教えてくれました。
Q. 張る時の注意点はありますか?
A. 張る時は、握りを持ってくれれば良いです。
本当は、握り下の手下節辺りを持って張ると良いですが、それは弓の成りの調整が
できないと、かえって弓を悪くしてしまうので難しいと思います。
Q. 竹弓に合う弦はありますか?
A. ニベ弓は麻弦が良い気がします。竹弓には弓に優しい弦が良いと思います。
Q. 弦は弦切れまで使いますか?
A. 弦切れは、弓に対して衝撃が強過ぎるので、避けて欲しいです。裏反りは、一瞬
戻りますが、すぐに元に戻りますから。
Q. 弓弝はどのくらいがお勧めですか?
A. 14.5㎝~15㎝くらいがお勧めです。以前は、かなり低く弓弝をする人がいました。
低すぎると、弓も返りやすく、手も打ちやすく、矢羽を傷めやすくなりますので
注意して下さい。
Q. こだわりのポイントはありますか?
A. 材料です。
Q. 好きな食べ物は何ですか?
A. 甘い物、和も洋も好きですが、あんこが好きです。特に粒あんです。
以上でインタビューを終了しました。
楠見蔵吉先生は、1年以上待っていただいている、ニベ弓注文のお客様に、今年のニベは
弓にしません、と、もう1年お待ちいただく、2年間見ないと、全然印象が変わっている。
今や、皆が知る、実績と名声があるにも拘わらず、挑戦し続ける、そういう弓師さん
です。今既に楠見蔵吉先生の弓をお使いの方も、まだ試されたことのない方も、最新の
楠見蔵吉をお試し下さい。新しい発見があると思います。