職人様 訪問コーナー 御矢師 永澤明久様

【職人様訪問】
咲矢弓道具では、弓道愛好家の皆様と、弓道具製作者様、弓道具店様をより良く、お繋ぎすることを目標に活動しています。
当コーナーでは、職人様にスポットを当て、弓道具と、その人を紹介させていただきます。

第9回は、御矢師 永澤明久先生です。

永澤先生とお会いしたのは、11月、紅葉・黄葉が街にまで降りてきて、とてもきれいな日でした。
晴れていれば、公園でインタビューをお願いしようと思いましたが、雨のため室内でのインタビューとなりました。
雨に濡れた紅葉した木々は、とても美しく、その中でゆっくりつつまれていたい気分になりました。
(紅葉につつまれるのに夢中で写真を撮り忘れてしまいました。永澤先生の手は撮影させていただきましたが。)

そして、少し緊張しながらお会いした永澤先生は、とても凛々しく、スタイルも良く、ダンディーで、素敵な俳優さんのようでした。
(私が俳優さんにお会いした経験が無いので、勝手なイメージですみません。)
さて、インタビューです。永澤先生のお願いで、先生はやめて下さい、という事なので、以後、永澤さんと表記させていただきます。
永澤さんは、伊達藩の矢師として仕えてきた家系を持つ名門で、明治維新や戦争等もあり、製作地を変えながら、良い竹を求め、現在秋田県で伝統の矢作りをされています。
20代前半で修業に入り、20年以上修業の後、代表となり、今や全国的に有名な一流の矢師先生です。

 

Q1.なぜ矢師さんになろうと思われたのですか?
A1.家業だからです。

 

Q2. 好きな言葉はありますか?
A2.『弦的同音』です。父親の言葉ですが、弦音と的を射る音が同時に聞こえる程の、良い矢
を作りたい、という願いが込められた言葉です。  自分も目指したいと思っています。
高低無く一直線に的に向かう矢です。その為には、全ての知恵と技術と心を箆に込めなけ
ればならないと思っています。

 

Q3.特に好きな作業はありますか?
A3.“矯め”ですね。荒矯め・火入れ・仕上げ等々、その時々で“矯め”をしますが、それぞれ違
うけど、それぞれ好きですね。

 

Q4.なぜ好きなのですか?
A4.目に見えて真っ直ぐになるのは楽しいし、竹は1本1本違うから、その違う1本1本に向き合
うのは、なお楽しいですね。難節(クセは大きいが良い素質を持っている竹)をこなす
(仕上げる)のも楽しいですよ。

 

Q5.箆作りで大切にしている所はありますか?
A5.“妥協しないように”ですね。作業は一つ一つに意味がある、その時にやるべき事を、しっ
かりやりたいですね。後に続く作業の事を考え、そのための今の作業をしっかりやりたい
ですね。

 

Q6.竹矢の良い所を教えて下さい。
A6.竹矢は射手の皆様それぞれに合わせて作製するので、そこだと思います。
『節有りて強し』という言葉があります。金属やカーボンでは、厚みや形状を精一杯工夫
しても、特定の矢尺と、特定の弓力の人に合わせる事しか出来ません。竹矢では、四つの
節があるおかげで、様々な矢尺・弓力・用途・使用頻度等に合わせて作製することが可能
です。そして、こっそり『弦的同音』の思いを込めて仕上げます。「金属やカーボンの矢
は、射手が矢に合わせなきゃならないんだよね。」とも語ってくれました。
そして、はるか昔から使われている、という事も大事だと思います。様々な射技・射法も
先人の先生方の苦労・工夫も、竹矢を含めた昔からの弓道具と共にあると思います。
それから、竹矢は自然界の物なので、最後は土に還ります。土から生まれ、僕達同じ生物
である人と過ごし、土に還る。「竹矢が温かいのは、そこなんだよなぁ。」そのようにと
ても嬉しそうに語ってくれました。
そして「もちろん持続可能性SDGsも抜群なんだよね」と、竹矢への愛が止まりません。

 

Q7.最後に皆さんにメッセージを下さいませ、
A7.竹矢を使ってみて欲しいですね。良い物も、悪い物もあるかもしれませんが、竹矢をまず
味わってみて欲しいです。自分の射に合ったもの、弓に合ったもの、規格品ではない矢、
を試してみて下さい。竹矢を使ったことのある人は、自分に合った矢を今後も探し求めて
みて下さい。僕達も皆さんのために、頑張って竹矢を作るので。

以上、永澤さんのインタビューが終了しました。予定時間を大幅に越え、慌てて次の予定に向かった
永澤さんは、竹矢と弓道への愛に溢れた素敵な矢師さんでした。
またお会い出来る日を楽しみにさせていただきます。本当にありがとうございました。

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