職人様訪問コーナー 大森弓具製作所 森茂夫先生 毛利文先生

【咲矢弓道具 職人様訪問コーナー】
咲矢弓道具では、弓道愛好家の皆様と、弓道具製作者様、弓道具店様をより良く、
お繋ぎすることを目標に活動しています。
当コーナーでは、職人様にスポットを当て、弓道具と、その人を紹介させて
いただきます。

第2回は、森大弓製作所の森茂夫先生・毛利文先生に取材をさせていただきました。
森茂夫さんは、弓師 南崎美利(みとし)先生に師事し、一貫して、飛貫中の実現を
目指し励まれてきました。南崎美利先生の弓は、丁寧にして艶っぽさを感じさせる、
素敵で良い弓を作製される弓師さんでした。毛利文さんは、森茂夫先生の教えを受け、
若くして、弓作製の道に入られ、高校卒業時には、一人で弓を打ち上げ、完成出来る
までになっていました。毛利文さんはその後、高岡短期大学 漆芸科(現富山大学
漆芸科)に進学され、漆を学ばれました。その時の作品が、

蒔絵が施された、毛利文先生自作の弓。実際に弓射を行い、深い裏反りの状態から、
弓を張り、弓射を行うという、漆の限界の常識をはるかに超える漆のしなやかさと
強さ、まん丸に引き分けられた竹弓の美しさと強さに、学友・先生方も大きな驚き
と、感動を受け、多くの称賛をいただきました。
【写真④・⑤】

乾漆の技法により作製された矢筒です。美しく、漆技巧を込め、丹念に丹念に仕上げ
ました。かけがえのない矢を、高温多湿の日本の気候から守る、しかも、美しい。
そういう品です。毛利文さんには、更に漆の道を極めることも求められましたが、
より良い弓の作製のために、幅広い知識・技能の修得をする、という目的があっての
進学でしたので、卒業後は、弓作りの道へと入られました。

〈森茂夫先生・毛利文先生の弓について〉
弓作りにおいて、最も大切にしていることは、引き成りです。
会の状態の時、上関板から、目付、握りを含め、下関板付近まで、まん丸になることを
理想とし、弭(はず)が短くなった弓などの場合、弦輪が抜けてしまうくらい、を目指しています。
引き成りがまん丸くなることは、弓全体が、働くことを意味し、当然のことながら、
矢勢・矢押しも良くなります。
弓作製の修業を始めてから、どうしたらそうなるか?ひたすらに考えてきた、と話され、
それが徐々に解ってきた、と語られました。

〈弓のお手入れについて〉
Q,弓のお手入れで、手拭い等で、強く拭いたり、油を塗る等の油分の補給をされる
こともあるかと思いますが?
A,あまり意味が無いと思います。それよりも、矢数をかけ過ぎないようにする方が、
大切だと思います。大体20射くらい迄が良いと思います。それと、張っている時間
が長過ぎると、裏反りが戻ってくるのに長時間が必要となりますので、お気を付けて
いただければと思います。

Q,弓弝は15㎝が良いのでしょうか?
A,弓弝は15㎝以上が基本だと思います。それより低いと、胴が入りやすいし、引っく
り返りやすくなります。

Q,弦は切れるまで使うのと、切れる前に交換するのと、どちらがお勧めですか?
A,弦切れにより、裏反りを戻すのが良いのではないでしょうか。

Q,弦音について、お考えを教えていただきたいのですが。
A,弦音はもちろん、打音とは違います。離れの後、たわんだ弦が再び弓の復元力により、
ピンと張る時に発生する音です。本当の弦音は、本人には聞こえない場合が多いです。
ちょっと離れた所にいた時に、すごい音がする時があります。何ごと、と思い、本人
に尋ねると、判らない。そんな事が何度もありましたよ。

森茂夫先生、毛利文先生は常に、より良い弓を目指されると同様に、世界中の方に、弓道の良さを
、竹弓の良さを知って欲しいと願っています。その一つの表れが、

写真【⑥(上関板)・⑦(下関板)・⑧】

にあります。関板内蔵弓の開発・作製です。海外の弓道愛好家の皆様は、移動・輸送の
際、長く・細い弓は、どうしても破損のリスク(特に首折れの危険性)が高くなります。
それを防ぐために、関板と内竹を逆にしてしまおう、という逆転の発想により、関板
内蔵弓というイノベーションが生まれました。
最初、お話しを聞いても、全く想像がつきませんでしたが、実物を拝見させていただき、
理解すると共に感激しました。と同時に、その美しさに感動しました。

森・毛利両先生の作品は、常に、美しさと、驚きがあります。
弓道愛好家の皆様に、是非手に取って、そして使用していただき、その感動を体感して
いただきたいと思います。

付記:現在、森茂夫先生・毛利文先生の作品は、ご多忙のため、今回紹介させていただいた、
弓への蒔絵・乾漆矢筒・関板内蔵弓などの品は、作製不可となっていますことを伝えさせて下さい。

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