職人様 訪問コーナー 順清様

順清先生_職人の手

【職人様訪問】第11回 弓師 順清先生

咲矢弓道具では、弓道愛好家の皆様、弓道具製作者様、弓道具店様をよりスムーズにお繋ぎすることを目標に活動しています。
当コーナーでは、各職人様にスポットを当て、弓道具と、その人物を紹介させていただきます。

順清先生について

第11回は、弓師 順清先生にお話しを伺いました。

私(筆者)が順清先生(以下、敬称略 順清さんと表記させていただきます。)とお会いし、弓を取り扱いさせていただいてから、5年以上の時間が経ちました。

その間、私も順清さんも、共に良い弓って何だろう?どうしたら良い弓に近付けるだろう?そして、作製者のその思いと品を、皆様に届けられるのだろうか。と考え、試行錯誤しながら日々を重ねてきました。

今、その思いと成果を皆様お伝えできることを、とても感慨深く、嬉しく思っています。

わずか5年ではありますが、成長期の5年間は、すごいと感じます。初めてお会いした時から、丁寧で細心の注意を払った愛情たっぷりの弓は、とても可愛らしく素敵でした。

その後、毎回送っていただく度に、成り・軽さ・引き味・わくわく感が増していきました。最近では、射手の皆様から「順清先生を用意して下さい。」と言っていただけるようになっています。
先日、最新作が届きました。昔から変わらぬ丁寧で細心の注意を払い、作製された弓は、裏反りが深くても取り扱いし易く、美しさ・柔らかさ・力強さが更に増しています。順清さんに、そのことを伝えると「たまたまです。」と話されました。

前置きが長くなりました。順清さんのインタビューです。

インタビュー

Q1.順清という銘はどのような思いで名付けられたのですか?

順清 弓 銘
(順清さん)
私の家は物作り(職人)を業とする人が多く、父方の祖父も、母方の祖父も職人さんでした。

そのような環境のおかげもあり、物作りを業として生きていけたら良いなと思って来ました。
そして、その時を迎えた時、家の先輩方に恥じぬ仕事をしたい!との思いから、父方の祖父から「順」の字を、母方の祖父から「清」の一文字を戴き「順清」と付けさせていただきました。

射法訓で有名な吉見順正先生と同じ読み方になり、恐縮ではありますが、頑張らせていただきたいと思っています。

Q2.弓師を業にされたのはなぜですか?

(順清さん)
たまたまが重なって今に至っています。

元々、子供の頃から物作りが好きで、小学生くらいまでは折り紙を色々折って楽しむ子供でした。高校では、いくつもの選択肢がありましたが、たまたまあった弓道部に入り、楽しんでいました。

職業選択では好きな物作りに関わりたいなぁ、と思っていましたが、たまたま近くに弓作製を修業させていただける方がいらっしゃることを知り、お願いし、修業させていただける事になり、現在に至っています。

Q3.弓製作に関わりどのくらいになりますか?

順清先生_工場3

(順清さん)
弓製作の修業を5年間やらせていただき、独立して9年経ちましたので、弓製作の作業に入ってから14年になります。なんとか、今迄やってこれたことを、皆様に感謝しています。ありがとうございます。

Q4.弓製作で好きな所はありますか?

(順清さん)
竹削りから、弓打ちまでの工程が好きです。…バラバラだった材料が一つになり、弓になる。その感覚が好きです。…弓を打っている!という実感が湧くその感覚が好きです。

…やってみないと、どうなるのか解らないので、試行錯誤しながらやっていく。…そこも好きな所かな、と思います。…う~ん、それが物作りが好き!ということだと思います。なかなか思った通りになるとも無く。…

Q5.目指す弓というのはありますか?

順清先生_工場2

(順清さん)
竹弓の基本は、弦通りと成り、だと思いますので、そこに違和感の無い弓、といいますか。う~ん…どちらかと言うと、特徴の無い弓を目指している感じです。芽節の配置は気を掛けていますね。

本来の竹が行きたがる、能力を発揮する方向を感じ、活かすことを心掛けています。下の成りはやや弱めにしています。上の成りの曲がり過ぎ等の負担を抑え、かつ、安定した矢飛びと故障率の低下を達成出来るようにしています。内竹には内竹に向いた材料を、外竹には外竹に向いた材料を選び、加工の仕方や削り量を変えながら行います。

手幅はやや広目に作製しています。それにより、角見の効きと弓返りの速さ、弓の安定を目指しています。手幅は測るとやや広目ですが、弓を手にすると広く感じさせず、ピタッと手に合うように、村仕上げも丁寧にさせていただいています。

村の種類としては、五平ムラ ということになると思います。イメージとしては、角見は自然と効きながら、手に当たる部分は(親指の左腹部も含め)柔らかく、痛い所の無いように心掛けています。

弓張りは弓弝(15cm以上)を守っていただければ、握りを持って、張っていただければ、初めて竹弓を扱う方にも安心してお使いいただけるように、弦通り・成りに気を配って作製しています。

良射をした時に、しっかり応えてくれる、そんな弓は良いですね。そんな弓を目指し、努力していきます。

Q6.最後に弓道愛好家の皆様にお伝えすることはありますか?

(順清さん)
今迄も、これからも、試行錯誤しながら良い弓を目指して進んで行きたいと思います。どの弓も精一杯打ち上げています。よろしければ、一度お試し下さい。

順清先生_職人の手

 


順清さん、本日は、長時間にわたり、丁寧に教えていただき、ありがとうございました。

編集後記

順清先生_工場1

順清先生の工房を訪問させていただいたのは、2月にしては暖かい、明るい日差しの日でした。

まだ新しい建物と、綺麗に掃除・整頓された空間は、シンプルで、物作り好きな順清さんそのままをあらわしていました。
一言一言をよく考えてから話される姿、特徴の無いことが特徴、の弓を目指す、と言いながら弓へのこだわりについては話が止まらなくなりました。

そして、その話には、順清さんの目指し、実現している弓の特徴が、思いが、溢れています。
順清さんと出会って5年間褒めても褒められなくても、常に改良・改善を試み、試行錯誤する姿を、
作品を通して見続けさせていただいています。

先人の教えに射手の成長と共に職人も成長する、同じ時代を生きる職人さんを見つけなさい。というものがあります。
順清さんはその教えにぴったりな弓師先生だと思います。

そして、私達、咲矢弓道具スタッフ一同も射手の皆様や順清先生に負けないように、
たくさんたくさん試行錯誤を繰り返して、皆様にわくわくを届けられるように進んでいきたいと思います。

順清先生、ありがとうございました。
これからも末永く、よろしくお願い致します。

順清先生作 竹弓の特徴

  • 裏反りはしっかりある(10~20㎝)のに、取り扱いし易く、丁寧に仕上げられています
  • 引き味の柔らかさと、反動の少なさ、安定した矢飛びを特徴としています
  • 弓成りと村にもこだわっています。美しいだけでなく、それが機能に結び付くように仕上げています
  • 物作りの家系に育ち、物作りが大好きで、弓製作の世界に入った順清先生が、今、自身最高の技術とノウハウ、思いを込めて打ち上げる作品です
  • 素朴で実直な心から生み出される弓は、材料選び、その加工、打ち上げ、村取り、成り、通りへの気配り、弭(はず)の切り方一つ、かんな掛け一つを取っても、目的を持って仕上げられています

弓力(並作・上作共)

並寸 → 9~20㎏
二寸伸 → 10~23㎏
四寸伸 → 12~24㎏

商品紹介

順清 並作 桜側木

順清 並作 桜側木 全体  順清 並作 桜側木

側木、関板に桜を使用し、性能を保ちつつ、お求め易い値段を実現しています。
一文字籐・3箇所巻き仕上げです。

 

順清 上作 ハゼ側木

順清 上作 ハゼ側木 全体  順清 上作 ハゼ側木

古来より、和弓に適した材料として知られる、ハゼ材を使用し、
軽さ・冴え・矢飛び等、今の精一杯を詰め込んだ作品です。
杉成籐・5箇所巻き仕上げです。

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